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(1)原材料

 

① 陶土


 

◇陶磁器用原土の種類

陶土は、磁器や陶器の製造に使用される原料である。現在、産地の陶磁器に使用されている原料は、国内産の陶石質原料、粘土質原料、輸入のカオリンに大別される。陶石質原料は磁器製造の主原料であり、粘土質原料は主に陶器に使用される。

 

図表1-5 陶磁器に使用される原料の種類

分類

概要

代表的な原料

陶石質原料

陶石は、磁器原料としてわが国では古くから重要なもので、現在でも主要原料となっている。
衛生陶器・タイル・硬質陶器などの原料としても欠くことができないものである。工業的には、陶石を微粉砕し、可塑性粘土を加えて坯土としている。
現在、わが国で最も広く用いられている磁器の原料は天草陶石である。

天草陶石(有田焼)
砥部陶石(砥部焼)
出石陶石(出石焼)
花坂石(九谷焼)

粘土質原料

粘土は、広義には直径0.01mm以下の微粒子よりなる土壌の総称である。
大別して、中世火成岩が熱水作用を受けて生じたもの(村上粘土等)、優白質水成岩が地表風化を受けて生じたもの(本宮粘土等)、泥質水成岩が炭層より分離される腐植物質の影響を受けて生じたもの(木節粘土等)に分けられる。

村上粘土(新潟県)
蛙目粘土(瀬戸、美濃)
木節粘土(瀬戸、伊賀)
三郷山粘土(信楽)
その他多数

カオリン (輸入原料)

耐火土が高くカオリンナイトを主成分とする粘土。高級な磁器素地の重要な原料であるが、日本には商業的な磁器用カオリンはほとんど産出しないので、韓国に産出する河東カオリンなどを輸入している。
組成は、珪酸46.5%、アルミナ39.5%、水14%。磁器製造の原料粘土は陶石を主体にカオリン、そして可塑性を増やすために蛙目粘土を適量に配合して用いる。

河東カオリン(韓国)
ニュージーランドカオリン
金剛カオリン(北鮮)

 (出所)日本粘土学会の資料

 

◇産地における原料の使用状況

陶土の陶磁器製品に使用される坯土は、これらの原料を単味であるいは調合して製造されるが、近年は良質な国内原料の減少により、調合した坯土の利用が増えている。伝統的陶磁器製品では、地元原土のみを使用している産地、地元原土を主体に瀬戸、岐阜等の大量粘土資源を調合している産地、他地域の原土のみを使用している産地に大別される。九谷焼では、手引きの製品は地元原土のみ、型ものは調合した坯土を使用している。また、輸入原料であるカオリンは、磁器の製造に使用されているが、伝統的工芸品ではあまり使用されていない。

 

図表1-6 陶磁器のはい坏土における原料の調合状況

原土の使用タイプ

産地の例

産地の原土のみを使用

越前焼、備前焼陶、丹波立杭焼、天草陶磁器、赤津焼、九谷焼、瀬戸染付焼、唐津焼、小石原焼

産地の原土を主体に他地域の原土を調合

小代焼、美濃焼、上野焼、九谷焼、伊賀焼、大谷焼、唐津焼、出石焼、信楽焼、会津本郷焼、大堀相馬焼、笠間焼、益子焼

他地域の原土のみを使用

三川内焼、京焼・清水焼

 (出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」をもとに作成

 

九谷焼の陶土製造

 

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② 竹

 

<竹の種類と産地>

青森県を北限として日本全国で栽培。日本では特に九州地方に多く繁殖し、中国、四国地方においても多くみられる。また、日本では主に三大竹といわれるモウソウチク、マダケ、ハチクが繁殖しており、日本の竹の90%を占める。

伝統的工芸品の原材料となる竹には、3大竹以外にまだ十数種あり、用途やデザインによって使い分けられている。竹工芸品産地へのアンケート調査によれば、真竹が最も多く、すす竹、矢竹、孟宗竹、支那竹、女竹、淡竹などの利用も多い。

多くの産地で調達上の問題となっている主要な竹は、真竹(駿河竹千筋細工  別府竹細工  都城大弓  八女提灯、京扇子・うちわ)、孟宗竹(駿河竹千筋細工、八女提灯、京扇子・うちわ)であり、その他では、淡竹・すす竹(高山茶筌)、筆軸用各種竹(奈良筆、熊野筆)、和竿用各種竹(江戸和竿)、房州女竹(房州うちわ)である。

 

図表1-7 伝統的工芸品に利用される主な竹

真竹(マダケ)

日本の栽培竹の6割を占め、大分県は全国No.1のマダケの産地。竹細工で使用する竹の中でもっとも生産量が多い竹である。稈は弾力性に富み、弓、竹刀、尺八・物差し、建材等竹製品全般に利用される。編組みに適した竹で、別府竹細工の主な材料となっている。

すす竹

民家の萱葺き屋根の天井に骨組み等に使われ、釜戸や囲炉裏の煙などで長年かけて赤黒くなったもの。

矢竹

昔は弓軸の材料として特に武家の屋敷に良く植えられた。用途として、矢、筆の軸、釣り竿、装飾用窓枠などに使われる。

孟宗竹(モウソウチク)

日本のタケ類の中では最大で、稈の高さは25m、最大直径20cmに及ぶ。花筒、床柱、竹器、建築装飾、造園などに利用される。

支那竹

直径が1センチほどの細い竹で渦巻模様の斑がある(中国原産)。丸竹のままで工芸品などに使われている。

女竹

川岸や海辺の丘陵などに群生する多年生常緑の笹。

淡竹(ハチク)

中国原産の竹で、北海道南部以南の各地で栽培。日本では、モウソウチク、マダケに次いで多くみられる。竹細工では貴重な素材として使用される。花器、茶筅、菓子器、桶、垂木、竹釘、垣根、すだれ、薬用などに利用される。

黒竹(クロチク)

和歌山、四国地方に多く、その他九州でも自生するが量が少ない。用途は、竹製品、内装材、釣竿、家具の一部、観賞用等に利用される。


主な竹

 

図表1-8 伝統的工芸品における竹の使用状況

カテゴリ

件数

構成比

真竹

13

76.5

すす竹

5

29.4

矢竹

5

29.4

孟宗竹

4

23.5

支那竹

4

23.5

雌竹(女竹)

4

23.5

淡竹

3

17.6

篠竹

1

5.9

その他

2

11.8

サンプル数(%ベース)

17

100

 

<竹材の製造>

伐採された真竹等の青竹は、一般に製竹業者により油抜き作業が行われ天日乾燥した後、竹材として出荷される。油抜き作業は、余分な水分や油分を除去するための作業で、材料を作り上げるための大切な工程である。

油抜き処理には、乾式法と湿式法がある。乾式法は「火晒し」とも呼ばれ、火にあぶって油脂分を竹の表面に滲み出させて手早く丁寧に拭き取っていく方法である。焦げやムラができないよう火の当て方に注意を要する。一方、湿式法は「湯晒し」とも呼ばれ、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液(0.020.05%)を入れた浴中で2030分程度煮沸して、竹の表面に滲み出た油脂分を手早く丁寧に拭き取る方法で、大量の竹材処理に適する。これらの油抜きした竹材は、処理後半月から1ヶ月ほど天日で乾燥させると竹材表皮の緑色が象牙色へと変わる。これを白竹(油抜き竹)という。

 

図表1-9 油抜き作業

 

 

 

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③ 麻糸(苧麻糸)

 

 伝統的工芸品の織物において、使用されている麻糸は苧麻(からむしの手績み糸、ラミーの紡績糸)、大麻(手績み糸)、リネン等である。宮古上布や八重山上布等沖縄の産地で調達上の問題が発生している麻糸は、苧麻(からむし)を原料とする手績み糸である。小千谷縮や近江上布においては、ラミーの紡績糸(輸入原料)も使用している。

 

<原料となる苧麻(からむし)>

 苧麻は、イラクサ科の多年生草木の植物で、その種類は世界中で1000種近くあるといわれている。現在では、日本・中国・インドネシア・ブラジルなどが主産地である。日本では、昭和村(福島県)、石垣島・宮古島(沖縄県)等において栽培されている。その呼び名は各地で異なり、からむし(昭和村)、青苧、ブー(宮古島、石垣島)などと呼ばれている。

 市場で販売されている苧麻糸の商品の総称としては「ラミー」が主流となっている。品種が異なることから、昭和村では、村で管理栽培しているものを「からむし」、中国産などの輸入物を「ラミー」と呼び分けている。

 

<手績み糸>

 手績み糸は、以下のような工程を経て作られる。

・成長した苧麻を刈り取り、清水に漬け皮をむき、その皮の肉質をこそぎ落として繊維だけを取りだし(苧引き)、乾燥して原麻が作られる。

・原麻の繊維を荒く裂き、さらに爪を使って細かく裂き糸にし、その糸先を一本ずつ捩り合わせてつなぎ、均一にする(苧績み)。長くつなぎ合わせた糸を糸車で「よりかけ」し、単糸の手績み糸が出来上がる。

 

図表1-10 からむしの原麻の製造工程

からむしの原麻の製造工程

図表1-11 手績み糸が出来るまで

手績み糸が出来るまで

 

<紡績糸>

小千谷縮、八重山上布では、国産の苧麻の生産量が少ないために、フィリピンなどから輸入したラミーと呼ばれる苧麻の紡績糸を使っている。生茎から繊維を採るには、動力式皮剥ぎ機(decorticator)を用いる。茎が乾燥すると分離しにくいので、刈取り後直ちに機械にかけて木質部を砕き、たたき落して繊維を抽出する。これを天日乾燥したものが原料となる。繊維の採取率は葉っぱを落した生茎に対して4 5%である。


図表1-12 輸入物のラミー紡績糸

 

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④ 漆

 

<漆と産地>

漆はウルシ科、ウルシ属の落葉高木で、樹高1015mになる。中国原産といわれ、日本では漆採取のために栽培され全国に分布しているが、うるし採取が行われているのは岩手県、茨城県などに限られている。樹液が「漆」として利用されるのは、日本、朝鮮半島、中国に分布する漆のほか、別種で東南アジアに分布するインドウルシ、カンボジアウルシ等がある。

中国の産地は,中央の山間地域に位置する湖北省,湖南省,四川省,陜西省,貴州省などが主で,品質つまり,粘稠度,色,透明度,乾燥時間,硬さ,水分量など,その特長を生かして輸入されている。日本と同様の漆の木から採取されるが,地理的な違いや採取,集荷方法の違い,また輸送に時間がかかるなどの理由から,輸入される漆は日本産と比較して品質は落ちるといわれている。

 

<うるし掻き>

うるし液の採取の方法は、ウルシノキの幹に傷をつけて、滲み出してくる樹液を特有の金ヘラで掻き取る。これを「うるし掻き」と呼ぶ。「うるし掻き」の時期は、およそ6月中旬から10月末まで行い、時期によって、採取された漆液の呼び名やその品質も異なっている。

うるし掻きの方法は、2通りあり、一年で樹幹の全体に傷を付け、採りきってしまう「殺掻き(ころしがき)法」と、数年に渡って採り続ける「養生掻き(ようじょうがき)法」とがある。現在はほとんど「殺掻き法」で採取している。「殺掻き法」は一年でうるし液を採りきり、その後萌芽更新のため木を切り倒す。

漆の木一本あたりの産出量は、813年経た成木(周囲2530センチ程度)で一年間にわずか200グラム程である。また、ウルシノキがうるし液を採取できるまでに生育するには813年かかるので、天然の漆液は非常に貴重なものである。

 

図表1-13 漆掻き

漆掻き1 漆掻き2 

 

<漆の精製>

漆の木から採取したそのままの漆液を、「荒味うるし」という。漆液は、樹幹からにじみ出した当初は乳白色をしているが、空気に触れると酸化し褐色に変化する。このため、採取した「荒味うるし」は木製の桶に入れ、蓋紙をして密封状態で出荷される。「荒味うるし」を塗料として使えるようにするために、下図のような工程を経て精製し、「精製漆」にする。漆の精製では、ろ過、なやし、くろめの一連の精製作業が、塗料としてのうるしの品質を左右する重要な工程である。

・ろ過 :「荒味うるし」はゴミや木の皮などが混入している。これに綿をちぎっていれ、熱を加えてろ過する。ろ過されたものを「生漆」という。

 ・なやし:荒味漆や生漆の質を均一にし、塗装時の平滑性や光沢を与えるために、撹拌する作業を「なやし」という。

 ・くろめ:なやし作業に続いて、熱を加えながら撹拌し30%程度含まれている水分を34%まで徐々に抜いていく作業を「くろめ」という。

 

図表1-14 漆の精製工程(生漆から製品化まで)

漆の精製工程(生漆から製品化まで) 

(「漆を科学する会」のホームページ等より作成)

 

図表1-15 漆の製品化工程の実際(生漆から製品化まで)

漆の製品化工程の実際(生漆から製品化まで)

(出所)(株)箕輪漆行の資料より

 

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⑤ 和紙原料(楮、三椏、雁皮)

 

和紙の原料としては、主に、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮(植物の外皮の下にある柔らかな内皮)繊維が使われてきた。このうち、楮は繊維が太くて長く強靭なため、幅広い用途に最も多く使用されている。雁皮は山に生えているものを取って使うため、生産量は少ない。上記の3種類のほかに、紙の用途に応じて、麻、わら、桑、竹、木材パルプなども和紙原料として使用される。

 本来これらの原料は、日本の国の山野、原野に野生のものを採取したり、畑のあぜ道、山の傾斜地等に栽培をして収穫をしていたりしていたが、和紙の消費量が少なくなるのと同時に、原料の生産高も少なくなった。その大きな要因として、1)原料の販売価格が労働に見合うだけの価格で販売が出来ず赤字生産になった、2)フィリピン・タイなどから安い原材料の輸入が始まり各地の和紙メーカーは好んでその原材料を使うようになった、などがある。

 

図表1-16 和紙の原料

和紙の原料

図表1-17 和紙原料の産地と用途

種類

主な産地

主な用途

楮(こうぞ)

生産高の過半数が高知県産の土佐楮。他に、那須楮や八女楮、石州楮など。

障子紙、表具洋紙、美術紙、奉書紙、その他幅広い用途に使用。

三椏(みつまた)

岡山県、高知県、徳島県、島根県、愛媛県

日本銀行券(紙幣)、金糸銀糸用紙、金箔の間にはさむ箔合紙、カナ用書道用紙、美術工芸紙など。

雁皮(がんぴ)

徳島県

金箔銀箔を打ちのばす箔打ち紙、襖の下貼り用の間似合紙など。

(出所)「全国手すき和紙連合会」のホームページより


<和紙原料の製造工程>

 楮、三椏は、蒸して木質部から剥皮した皮を「黒皮」といい、黒皮を乾燥した後、皮さらしなどを行って外皮をはぎとった内皮を「白皮」と呼ぶ。和紙原料としては、黒皮あるいは白皮の状態で、生産農家から紙すき屋に出荷される。品種の違いによりそれぞれ分類され、共に15kgを一束として結束されている。

楮、三椏は、蒸して木質部から剥皮した皮を「黒皮」といい、黒皮を乾燥した後、皮さらしなどを行って外皮をはぎとった内皮を「白皮」と呼ぶ。和紙原料としては、黒皮あるいは白皮の状態で、生産農家から紙すき屋に出荷される。品種の違いによりそれぞれ分類され、共に15kgを一束として結束されている。

 

図表1-18 楮の白皮づくり

楮の白皮づくり

(「あーと和紙工房はくすい」より)

 

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