3.産地における調達・取引・情報収集の状況
3-1.陶土
(1)産地における調達の状況
・産地全体としては、供給量に関して深刻な問題となっている産地はない。組合へのアンケート調査では「供給量が減少している」と回答した産地が6産地あったが、現在必要量が確保できない状況にあるわけではない。これらの産地は、産地の規模が小さく原土調達体制が不安定、法律上の規制がある、今後の新たな鉱山確保に関して不安を抱いている産地などである。例えば、小代焼(熊本県)、大谷焼(徳島県)などのように窯元が非常に少ない産地では、個々の窯元が地元等から原土を調達し陶土づくりを行っており、安定的な調達体制という点で多少不安を抱えている。また、信楽焼(滋賀県)では、新しい鉱山の確保に取り組んでいるが、最近は法律等による規制が厳しくなっている。薩摩焼(鹿児島県)では、一部の原土は自由には採掘できない国立公園内にある。
・供給量以外の問題としては、原土のコスト上昇が大堀相馬焼(福島県)、四日市萬古焼(三重県)、備前焼(岡山県)において、また原土の品質悪化が京焼・清水焼において問題となっている。
図表3-1 産地における陶土の供給状況
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
充分な供給量がある |
22 |
75.9 |
供給量が減少している |
6 |
20.7 |
その他 |
1 |
3.4 |
サンプル数(%ベース) |
29 |
100.0 |
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」
(2)産地の調達における取引関係
・多くの産地では、窯元が地元の製土業者等から直接陶土を調達している。また、組合が地元業者から陶土を調達して窯元に供給、または地元や他地域から原料を調達し組合自ら陶土を製造し窯元に供給するといったケースもある。
図表3-2 陶土の調達における取引関係
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
組合員が地元原料業者と取引して原料を調達 |
12 |
41.4 |
組合員が地元製土業者と取引し陶土を調達 |
13 |
44.8 |
組合員が他地域の原料業者と取引して原料を調達 |
5 |
17.2 |
組合員が他地域の製土業者と取引して陶土を調達 |
8 |
27.6 |
組合が原料業者と取引して原料を調達し陶土を製造販売 |
7 |
24.1 |
組合が製土業者と取引して陶土を調達 |
2 |
6.9 |
その他 |
6 |
20.7 |
サンプル数(%ベース) |
29 |
100.0 |
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」
図表3-3 陶磁器産地における資源の状況
産地 |
使用する主原料 |
調達状況 |
他の問題 |
大堀相馬焼(福島県) |
大堀粘土、鹿島粘土 |
○ |
コスト上昇 |
会津本郷焼(福島県) |
大久保土、砂利土、胃土、的場粘土 |
○ |
|
笠間焼(茨城県) |
笠間粘土、蛙目粘土 |
○ |
|
益子焼(栃木県) |
新福寺粘土、北郷谷粘土、木節粘土 |
○ |
|
赤津焼(愛知県) |
本山木節粘土、赤津蛙目粘土、赤津山土 |
○ |
|
瀬戸染付焼(愛知県) |
猿投長石、本山木節粘土、本山蛙目粘土 |
○ |
|
常滑焼(愛知県) |
富貴粘土、板山粘土、河和粘土、頁岩粘土 |
|
|
美濃焼(岐阜県) |
もぐさ土、木節粘土、蛙目粘土、藻珪 |
○ |
|
四日市萬古焼(三重県) |
知多黄土、垂坂黄土、垂坂青土、村上粘土、木節粘土、滝川陶石、河合陶石 |
○ |
コスト上昇 |
伊賀焼(三重県) |
青岳蛙目粘土、島ヶ原蛙目粘土、丸柱粘土 |
○ |
|
九谷焼(石川県) |
花坂陶石、大日陶石 |
○ |
|
越前焼(福井県) |
青ねば、赤べと、太古土 |
○ |
|
信楽焼(滋賀県) |
実土粘土」、信楽産蛙目粘土、木節粘土 |
△ |
新しい鉱山の確保に制約 |
京焼・清水焼(京都府) |
柿谷陶石、天草陶石、蛙目粘土、長石、木節粘土、カオリン等 |
○ |
品質が悪化 |
丹波立杭焼(兵庫県) |
四辻粘土、弁天黒土 |
△ |
|
出石焼(兵庫県) |
柿谷陶石 |
○ |
|
石見焼(島根県) |
宇野白粘土、宇野赤粘土 |
- |
|
備前焼(岡山県) |
ヒヨセ粘土、長船黒土 |
○ |
コスト上昇 |
萩焼(山口県) |
大道土、金峯山土、見島土 |
- |
|
大谷焼(徳島県) |
萩原粘土、讃岐粘土、姫田粘土 |
△ |
個々の窯元がネットワークを使って調達 |
砥部焼(愛媛県) |
砥部陶石、高野川陶石 |
○ |
|
小石原焼(福岡県) |
小石原陶土 |
○ |
|
上野焼(福岡県) |
上野陶土 |
○ |
|
伊万里・有田焼(佐賀県) |
天草陶石、泉山陶石 |
○ |
|
唐津焼(佐賀県) |
松浦川水系粘土、有田川水系粘土、塩田川・六角川上流水域粘土 |
△ |
|
三川内焼(長崎県) |
天草陶石 |
○ |
|
波佐見焼(長崎県) |
天草陶石、三股陶石 |
- |
|
小代焼(熊本県) |
小代粘土 |
△ |
それぞれの窯元が調達 |
天草陶磁器(熊本県) |
天草陶石 |
○ |
|
薩摩焼(鹿児島県) |
成川白土、笠沙陶石、伊作田粘土、飯森粘土、鞍掛砂 |
△ |
原土によっては国立公園内などで採掘に制約あり |
壺屋焼(沖縄県) |
(荒焼)島尻粘土/(上焼)喜瀬粘土、古我知粘土、石川粘土、前兼久粘土、山田粘土、喜名粘土 |
- |
|
(注1) ○:充分な供給量がある △:供給量が減少している -:不明(回答なし)
(出所)原材料・生産用具のデータベース(伝統的工芸品産業振興協会)及び平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」をもとに作成
(3)陶土の調達における問題点
・組合へのアンケート調査によれば、調達上の問題として、「取引相手の減少」、「原材料の品質低下」、「原材料の価格上昇」、「採掘権者の収益悪化による採掘者の後継者不足」等が挙がっている。
図表3-4 陶土の調達における問題点
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
廃業等による取引相手の減少により調達上の支障が生じている |
4 |
50.0 |
調達している原材料の品質が低下 |
4 |
50.0 |
その他 |
3 |
37.5 |
サンプル数(%ベース) |
8 |
|
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」
(4)陶土に関する情報収集について
・陶土の情報に関しては、回答した組合の全てが「情報は入手できている」と回答している。
・情報の主たる入手先は「地元取引業者」で、今後入手したい主な情報は、「国内原料に関する情報」、「原材料の開発情報」、「産地外の供給業者に関する情報」としている。
図表3-5 情報の入手先
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
地元取引業者 |
8 |
88.9 |
他地域の取引業者 |
4 |
44.4 |
地域の試験・研究機関 |
3 |
33.3 |
同業他社 |
2 |
22.2 |
特に情報を入手していない |
0 |
0.0 |
その他 |
0 |
0.0 |
サンプル数(%ベース) |
9 |
|
図表3-6 今後入手したい情報について
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
国内原材料に関する情報 |
17 |
58.6 |
海外原材料に関する情報 |
4 |
13.8 |
原材料に輸入商社に関する情報 |
1 |
3.4 |
産地外の供給業者に関する情報 |
8 |
27.6 |
原材料の開発に関する情報 |
14 |
48.3 |
その他 |
5 |
17.2 |
サンプル数(%ベース) |
29 |
|
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・流通と情報収集に関するアンケート調査」(図表3-5~3-6)
