2.生産基盤の生産・ 供給の実態
2-1.陶土
(1)埋蔵量
・陶磁器に使用される陶土資源としは、磁器に使用される陶石では天草陶石、陶磁器に使用される粘土では愛知・岐阜等の蛙目粘土、木節粘土等が著名である。
天草陶石は、天草陶磁器、伊万里・有田焼、京焼・清水焼等の伝統的工芸品に用いられている。
また、瀬戸の蛙目粘土・木節粘土は、瀬戸染付焼・赤津焼の原料の他、他の伝統工芸品の調合用粘土として広く利用されている。
ただし、これら埋蔵量が多い陶石や粘土は、伝統的工芸品に利用される量は極めて少なく、主に生活用陶磁器、工業用陶磁器などに利用されている。
・各地の埋蔵量に関するデータはほとんどないが、例えば瀬戸地区の場合、1500万トン以上の粘土資源があると推定されている。
・土や釉薬の味わいを重視する多くの伝統的陶器の産地は、地元産出の粘土に依存しているが、資源量が豊富な地域は少ない。
現状では資源枯渇が深刻化している地域はないが、新たな地元粘土資源の確保、他地域の類似粘土資源の確保、鉱山の開発等は、今後の産地における大事な課題になると推測される。
・埋蔵量の調査については、資源枯渇化がまだ深刻化していないことから、調査をしていない産地も多い。
土木建設等により、新たに粘土資源が発見されている事例もある。
※益子焼協同組合では、資源枯渇化の問題から、これまで資源が埋蔵されているのではないかと有望視されていた地区(北郷谷地区)の試掘調査を実施した。その結果、今後、20年~30年間の単位で使用可能な良質な資源が発見されている。
図表2-1 産地における原土の埋蔵量
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
埋蔵量は豊富で、おおよそ今後10年間以上は問題ない |
5 |
55.6 |
埋蔵量は豊富ではないが、おおよそ今後10年間は問題ない |
4 |
44.4 |
サンプル数(%ベース) |
9 |
100.0 |
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」
図表2-2 産地における埋蔵量の調査状況
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
調査をしている |
9 |
31.0 |
調査を予定または計画している |
3 |
10.3 |
調査はしていない |
17 |
58.6 |
サンプル数(%ベース) |
29 |
100.0 |
(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」
図表2-3 陶磁器産地における資源の状況
産地 |
使用する主原料 |
資源埋蔵状況 (注1) |
資源調査の有無 |
大堀相馬焼(福島県) |
大堀粘土、鹿島粘土 |
- |
未調査 |
会津本郷焼(福島県) |
大久保土、砂利土、胃土、的場粘土 |
○ |
調査済み |
笠間焼(茨城県) |
笠間粘土、蛙目粘土 |
- |
未調査 |
益子焼(栃木県) |
新福寺粘土、北郷谷粘土、木節粘土 |
○ |
|
赤津焼(愛知県) |
本山木節粘土、赤津蛙目粘土、赤津山土 |
○ |
調査済み |
瀬戸染付焼(愛知県) |
猿投長石、本山木節粘土、本山蛙目粘土 |
|
未調査 |
常滑焼(愛知県) |
富貴粘土、板山粘土、河和粘土、頁岩粘土 |
- |
|
美濃焼(岐阜県) |
もぐさ土、木節粘土、蛙目粘土、藻珪 |
○ |
調査済み |
四日市萬古焼(三重県) |
知多黄土、垂坂黄土、垂坂青土、村上粘土、木節粘土、滝川陶石、河合陶石 |
- |
|
伊賀焼(三重県) |
青岳蛙目粘土、島ヶ原蛙目粘土、丸柱粘土 |
- |
未調査 |
九谷焼(石川県) |
花坂陶石、大日陶石 |
○ |
調査済み |
越前焼(福井県) |
青ねば、赤べと、太古土 |
- |
未調査 |
信楽焼(滋賀県) |
実土粘土」、信楽産蛙目粘土、木節粘土 |
- |
予定・ 計画 |
京焼・ 清水焼(京都府) |
柿谷陶石、天草陶石、蛙目粘土、長石、木節粘土、カオリン等 |
- |
未調査 |
丹波立杭焼(兵庫県) |
四辻粘土、弁天黒土 |
△ |
調査済み |
出石焼(兵庫県) |
柿谷陶石 |
○ |
調査済み |
石見焼(島根県) |
宇野白粘土、宇野赤粘土 |
- |
|
備前焼(岡山県) |
ヒヨセ粘土、長船黒土 |
- |
× |
萩焼(山口県) |
大道土、金峯山土、見島土 |
- |
|
大谷焼(徳島県) |
萩原粘土、讃岐粘土、姫田粘土 |
- |
未調査 |
砥部焼(愛媛県) |
砥部陶石、高野川陶石 |
- |
予定・ 計画 |
小石原焼(福岡県) |
小石原陶土 |
- |
未調査 |
上野焼(福岡県) |
上野陶土 |
- |
× |
伊万里・ 有田焼(佐賀県) |
天草陶石、泉山陶石 |
△ |
調査済み |
唐津焼(佐賀県) |
松浦川水系粘土、有田川水系粘土、塩田川・ 六角川上流水域粘土 |
△ |
未調査 |
三川内焼(長崎県) |
天草陶石 |
- |
未調査 |
波佐見焼(長崎県) |
天草陶石、三股陶石 |
- |
|
小代焼(熊本県) |
小代粘土 |
△ |
調査済み |
天草陶磁器(熊本県) |
天草陶石 |
○ |
調査済み |
薩摩焼(鹿児島県) |
成川白土、笠沙陶石、伊作田粘土、飯森粘土、鞍掛砂 |
- |
未調査 |
壺屋焼(沖縄県) |
(荒焼)島尻粘土/(上焼)喜瀬粘土、古我知粘土、石川粘土、前兼久粘土、山田粘土、喜名粘土 |
- |
|
(注1) ○:埋蔵量は豊富で、今後10年間以上は問題ない △:埋蔵量は豊富ではないが、今後10年間は問題ない
(出所)原材料・ 生産用具のデータベース(伝統的工芸品産業振興協会)及び平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」をもとに作成
(2)供給業者による供給状況
アンケートに回答したほとんどの陶土供給業者は、産地の需要に応じて十分な供給を行っている。
図表2-4 供給業者による陶土の供給状況
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
産地の需要に応じて十分な供給を行っている |
11 |
91.7 |
産地の需要に対し供給不足の状況にある |
1 |
8.3 |
合計 |
12 |
100.0 |
(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」
(3)生産・ 供給システム
・伝統的陶磁器における陶土の生産・ 流通システムはいろいろなケースがある。多くは、地元の原土を、地元の原土採掘業者や製土業者が窯元に供給するシステムが構築されている。
・天草陶石、柿谷陶石、蛙目粘土、木節粘土等の原料は、他産地にも供給されている。
(4)生産・ 供給における問題点
・陶石や粘土の産地においては、採掘量の減少に伴う収益悪化、採掘業者や製土業者の高齢化と後継者不足等により、関係業者の廃業が増えている。その結果、一部の産地において、調達量の減少、陶土の価格上昇等の影響が生じている。
・有望な原土があっても、宅地化の進展、資源が埋蔵されている場所での建設工事、農地のため手が出せない、等により、新たな粘土資源の確保が困難となる状況が生まれている。
・取引においては、取引量が少なくなっていることも問題となっている。
図表2-5 生産・ 供給における問題
カテゴリ |
件数 |
構成比(%) |
特に問題はない |
3 |
23.1 |
納期への対応が困難 |
2 |
15.4 |
取引価格への対応が困難 |
2 |
15.4 |
産地が要求する品質の原材料確保が困難 |
1 |
7.7 |
取引量が少ない |
7 |
53.8 |
産地の取引方法や取引形態 |
1 |
7.7 |
合計 |
13 |
100.0 |
(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」
(5)生産・ 供給に対する供給側の対応
・原土の品質低下に対しては、製土業者、地元の公的試験研究機関等が中心となり、他産地の粘土を配合等により、陶土の品質確保に取り組んでいる。



