平成19年度トップページ > 2.生産基盤の生産・供給の実態

2.生産基盤の生産・ 供給の実態

 

2-1.陶土

 

(1)埋蔵量

・陶磁器に使用される陶土資源としは、磁器に使用される陶石では天草陶石、陶磁器に使用される粘土では愛知・岐阜等の蛙目粘土、木節粘土等が著名である。
天草陶石は、天草陶磁器、伊万里・有田焼、京焼・清水焼等の伝統的工芸品に用いられている。
また、瀬戸の蛙目粘土・木節粘土は、瀬戸染付焼・赤津焼の原料の他、他の伝統工芸品の調合用粘土として広く利用されている。
ただし、これら埋蔵量が多い陶石や粘土は、伝統的工芸品に利用される量は極めて少なく、主に生活用陶磁器、工業用陶磁器などに利用されている。

・各地の埋蔵量に関するデータはほとんどないが、例えば瀬戸地区の場合、1500万トン以上の粘土資源があると推定されている。

・土や釉薬の味わいを重視する多くの伝統的陶器の産地は、地元産出の粘土に依存しているが、資源量が豊富な地域は少ない。
現状では資源枯渇が深刻化している地域はないが、新たな地元粘土資源の確保、他地域の類似粘土資源の確保、鉱山の開発等は、今後の産地における大事な課題になると推測される。

・埋蔵量の調査については、資源枯渇化がまだ深刻化していないことから、調査をしていない産地も多い。
土木建設等により、新たに粘土資源が発見されている事例もある。

※益子焼協同組合では、資源枯渇化の問題から、これまで資源が埋蔵されているのではないかと有望視されていた地区(北郷谷地区)の試掘調査を実施した。その結果、今後、20年~30年間の単位で使用可能な良質な資源が発見されている。

 

図表2-1 産地における原土の埋蔵量

カテゴリ

件数

構成比(%)

埋蔵量は豊富で、おおよそ今後10年間以上は問題ない

5

55.6

埋蔵量は豊富ではないが、おおよそ今後10年間は問題ない

4

44.4

サンプル数(%ベース)

9

100.0

(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」


図表2-2 産地における埋蔵量の調査状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

調査をしている

9

31.0

調査を予定または計画している

3

10.3

調査はしていない

17

58.6

サンプル数(%ベース)

29

100.0

(出所)平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」

 

図表2-3 陶磁器産地における資源の状況

産地

使用する主原料

資源埋蔵状況 (注1)

資源調査の有無

大堀相馬焼(福島県)

大堀粘土、鹿島粘土

未調査

会津本郷焼(福島県)

大久保土、砂利土、胃土、的場粘土

調査済み

笠間焼(茨城県)

笠間粘土、蛙目粘土

未調査

益子焼(栃木県)

新福寺粘土、北郷谷粘土、木節粘土

 

赤津焼(愛知県)

本山木節粘土、赤津蛙目粘土、赤津山土

調査済み

瀬戸染付焼(愛知県)

猿投長石、本山木節粘土、本山蛙目粘土

 

未調査

常滑焼(愛知県)

富貴粘土、板山粘土、河和粘土、頁岩粘土

 

美濃焼(岐阜県)

もぐさ土、木節粘土、蛙目粘土、藻珪

調査済み

四日市萬古焼(三重県)

知多黄土、垂坂黄土、垂坂青土、村上粘土、木節粘土、滝川陶石、河合陶石

 

伊賀焼(三重県)

青岳蛙目粘土、島ヶ原蛙目粘土、丸柱粘土

未調査

九谷焼(石川県)

花坂陶石、大日陶石

調査済み

越前焼(福井県)

青ねば、赤べと、太古土

未調査

信楽焼(滋賀県)

実土粘土」、信楽産蛙目粘土、木節粘土

予定・ 計画

京焼・ 清水焼(京都府)

柿谷陶石、天草陶石、蛙目粘土、長石、木節粘土、カオリン等

未調査

丹波立杭焼(兵庫県)

四辻粘土、弁天黒土

調査済み

出石焼(兵庫県)

柿谷陶石

調査済み

石見焼(島根県)

宇野白粘土、宇野赤粘土

 

備前焼(岡山県)

ヒヨセ粘土、長船黒土

×

萩焼(山口県)

大道土、金峯山土、見島土

 

大谷焼(徳島県)

萩原粘土、讃岐粘土、姫田粘土

未調査

砥部焼(愛媛県)

砥部陶石、高野川陶石

予定・ 計画

小石原焼(福岡県)

小石原陶土

未調査

上野焼(福岡県)

上野陶土

×

伊万里・ 有田焼(佐賀県)

天草陶石、泉山陶石

調査済み

唐津焼(佐賀県)

松浦川水系粘土、有田川水系粘土、塩田川・ 六角川上流水域粘土

未調査

三川内焼(長崎県)

天草陶石

未調査

波佐見焼(長崎県)

天草陶石、三股陶石

 

小代焼(熊本県)

小代粘土

調査済み

天草陶磁器(熊本県)

天草陶石

調査済み

薩摩焼(鹿児島県)

成川白土、笠沙陶石、伊作田粘土、飯森粘土、鞍掛砂

未調査

壺屋焼(沖縄県)

(荒焼)島尻粘土/(上焼)喜瀬粘土、古我知粘土、石川粘土、前兼久粘土、山田粘土、喜名粘土

 

(注1) ○:埋蔵量は豊富で、今後10年間以上は問題ない △:埋蔵量は豊富ではないが、今後10年間は問題ない
(出所)原材料・ 生産用具のデータベース(伝統的工芸品産業振興協会)及び平成19年度「伝統的工芸品の生産基盤の取引・ 流通と情報収集に関するアンケート調査」をもとに作成

 

(2)供給業者による供給状況

 アンケートに回答したほとんどの陶土供給業者は、産地の需要に応じて十分な供給を行っている。

 

図表2-4 供給業者による陶土の供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

11

91.7

産地の需要に対し供給不足の状況にある

8.3

合計

12

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

3)生産・ 供給システム

・伝統的陶磁器における陶土の生産・ 流通システムはいろいろなケースがある。多くは、地元の原土を、地元の原土採掘業者や製土業者が窯元に供給するシステムが構築されている。

・天草陶石、柿谷陶石、蛙目粘土、木節粘土等の原料は、他産地にも供給されている。

 

(4)生産・ 供給における問題点

・陶石や粘土の産地においては、採掘量の減少に伴う収益悪化、採掘業者や製土業者の高齢化と後継者不足等により、関係業者の廃業が増えている。その結果、一部の産地において、調達量の減少、陶土の価格上昇等の影響が生じている。

・有望な原土があっても、宅地化の進展、資源が埋蔵されている場所での建設工事、農地のため手が出せない、等により、新たな粘土資源の確保が困難となる状況が生まれている。

・取引においては、取引量が少なくなっていることも問題となっている。

 

図表2-5 生産・ 供給における問題

カテゴリ

件数

構成比(%)

特に問題はない

3

23.1

納期への対応が困難

2

15.4

取引価格への対応が困難

2

15.4

産地が要求する品質の原材料確保が困難

1

7.7

取引量が少ない

7

53.8

産地の取引方法や取引形態

1

7.7

合計

13

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(5)生産・ 供給に対する供給側の対応

 

・原土の品質低下に対しては、製土業者、地元の公的試験研究機関等が中心となり、他産地の粘土を配合等により、陶土の品質確保に取り組んでいる。

 

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2-2.竹

 

(1)国内における竹林の状況

・日本国内における竹の生息状況をみると、全国的には竹林面積は2002年段階で15.6haある。これは森林総面積の0.6%に相当し、森林面積における竹林面積の占める割合は無視できるほどの数値にすぎない。地域別の分布状況をみると、西日本地域で竹林の占める割合が高く、特に九州地域における割合が大きい。

・竹林面積の推移を見ると、都市化に伴い減少した竹林面積は1980年代以降増加しているものの、竹材を栽培する生産竹林は減少し続けている。これは、中国等の諸外国から安価な竹材、竹製品などが大量に輸入販売されるようになったこと、代替資材の普及、さらには近年の長期的な国内不況の影響などによって「 国産竹」需要が著しく低下していることによる。このため竹産業に携わる生産者の竹林栽培意欲が減退し、生産者の高齢化と後継者不足を引き起こし、竹産業は低迷化している。このような竹産業の低迷化により、人の手による竹林の維持管理がなされなくなった「 放置竹林」が現在増加する傾向にあり、放置竹林の増加は良質な竹材の生育を阻害するため、その対応が今日問題になっている。

 

図表2-6 竹林面積の推移
竹林面積の推移

 

図表2-7 地域別にみた竹林面積の占める割合
地域別にみた竹林面積の占める割合

 

(2)竹材の生産・供給状況

 

<生産・供給の状況>

・竹材の生産量は減少傾向にあり、生産量が最大だった1970年(13,465千束)と比較すると10分の1に減少している。

・また、生産人材の減少等により、一部の地域では供給力不足が生じている。

 

図表2-8 竹材の需給(単位:千束)

 

1975

1985

1999

2000

2001

2002

2003

2004

生産量

10,494

7,479

2,263

2,008

1,860

1,477

1,527

1,372

輸入量

696

592

636

652

607

593

549

515

輸出量

99

30

2

2

2

32

2

2

消費量

11,091

8,041

2,897

2,658

2,468

2,038

2,075

1,885

 

(出所)日本特用林産振興会の統計より

<生産・供給に関わる業者・人材の状況>

・竹材の生産に関わる主たる業者や人材は、伐竹する人、仲買人、製竹業者である。竹の伐採は、通常、仲買人が専属の伐竹する人を指揮して行われる。竹の伐採では、小枝の処理、結束を効率的に行うなど経験が必要とされる。伐採され路上に置かれた竹を製竹業者が回収する。

・また、経営状況も悪化しているため、休業状態の企業もある。

 

(3)生産・供給システム

・一般に、竹材は、竹林農家から仲買業者(伐竹集荷業者)あるいは製竹業者が購入し、集められた竹を製竹業者が油抜き加工等を行って、竹工品業者に出荷される。仲買人は専業者が極めて少なく、農業を兼ねている人がほとんどで、所有者から立竹を購入し伐竹集荷したり、所有者が伐採した竹材を購入集荷したりして、製竹業者・卸売業者に販売している。

 

(4)生産・供給における問題点

・企業等へのヒアリング調査によれば、竹林の所有者、伐竹する人、農業を兼ねている仲買人の高齢化が進んでおり、竹材の生産に関わる人材不足が懸念されている。また、製竹業者は、竹の需要減少とともに数や規模が減少している。大分県の製竹業者の場合従業員23人規模の企業がほとんどで、20社程度ある。

・供給業者へのアンケート調査をみると、回答状況から「産地の需要に対し供給不足の状況にある」ことが推測される。その要因として「原材料生産者の数が減少しているため」、「原材料生産者が高齢化しているため」、「品質の良い原材料の確保が困難になっているため」と回答している。その結果、取引における問題として、回答企業の半数が「納期への対応が困難」、「産地が要求する品質の原材料確保が困難」等の問題が発生している。

 

(5)生産・供給に対する供給側の対応

・自然環境保全活動団体・竹林救援協会では、木曽川河川敷の放置荒廃竹林(民有地)を活動拠点として、伐採管理活動の講習と実施作業、竹の資源化取り組み、チップ加工処理、青竹加工品製造等の無償管理活動を行っている。

・鳥取県では、地域による竹林対策への取り組みを促進・支援するため、適正な竹林管理の知識や技術等を習得した地域の竹林整備リーダーの育成を図っている。

・愛媛県では、平成16年度に「竹資源循環利用促進プログラム策定委員会」を設置し、竹資源の循環利用と竹林整備に関する「竹資源循環利用促進プログラム」を策定している。

・京都府大山崎町では、竹林を少しずつでも整備していこうと、町の指導の下に199710月に活動を開始。200110月からは町の手を離れて、大山崎竹林ボランティアによる活動が始まっている。メンバーは約40人で、堺、大阪、西宮、伊丹、宝塚、京都など、他市町村からの人が多く、年齢的にはシルバーがほとんどである。

 

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2-3.麻糸(苧麻糸)

 

(1)生産・供給の状況

 

<手績み糸の生産量>

・昭和村は、六百有余年のからむし栽培技術を伝承してきた本州唯一の上布用高品質苧麻栽培地で、原麻(糸に加工する前の状態)の生産を行っている。昭和50年頃は、140アールの栽培畑を有していたが、現在は90アールに減少している。この昭和村の原麻から、越後上布・小千谷縮、昭和村のからむし織等に使用される手績み糸が生産されている。

・宮古上布に使用されるからむし原麻の年間生産量は、平成18年度で約73kg(組合が把握の数値)。八重山上布における手績み糸の年間生産量は、平成1315年は130キロ前後であったが、年々減ってきており、現在では100キロ前後である(ただ、上布に必要な細い糸は軽いので、一概にキロ数で生産量の評価はできない)。

・上記3産地による生産量(原麻の重量≒手績み糸の重量とした場合)は300kg330kg程度と推測される。


図表2-9 からむし原麻の生産量

 

年間生産量

備考

昭和村

120kg~150kg

栽培農家数:45軒 栽培面積:90アール(2アール/軒)

宮古島

73kg

組合把握の量

石垣島

100kg前後

手績み糸の重量


 

<生産に関わる人材の状況>

・手績み糸の生産に関わる重要な人材としては、栽培する人、苧引き(おびき)する人、苧績み(おうみ)する人である。からむしの栽培、苧引き、苧績みは経験や熟練を要する。主に農家、農家の女性が担っている。

・苧績みする人の数は、現在、小千谷縮及び宮古上布ではそれぞれ10名弱、八重山上布では4050名となっている。

 

<生産・供給の状況>

・手績み糸に使用される原麻の供給量に関しては、生産量は減少しているものの供給不足の状況にはない。しかし、手績み糸の供給に関しては、手績みの担い手不足等により、供給不足になっている糸もある。供給業者へのアンケート調査においても、回答企業5社中4社が、「産地の需要に応じて十分な供給を行っている」と回答している。「供給不足の状況にある」の具体的な内容としては、「特に最高の品質の苧麻の双糸については、一人の職人が一日に2gしか績むことができないため、必要量の確保がとても困難」との回答があった。

 

図表2-10 原麻、麻糸の供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

4

80.0

産地の需要に対し供給不足の状況にある

1

20.0

合計

5

100.0

 

(2)生産・供給システム

・昭和村の場合、生産された原麻のうちの約15%(上質の原麻)が、越後上布・小千谷縮布技術保存協会に出荷され、小千谷縮等に利用されている。残りの85%は昭和村のからむし織(着尺、帯、小物製品)等で利用されている。

・ラミーは、主にフィリピン産、マレーシア産、中国産の原麻を輸入し、これを日本の紡績会社において紡績し、産地に供給されている。小千谷縮・近江上布・八重山上布においては、紡績会社からラミーの紡績糸を調達して使用している。

・小千谷縮では、輸入ラミーを使用した一般向け商品とからむし手績み糸を使用した重要無形文化財としての商品の二つの流通経路がある。

 

(3)生産・供給における問題点

・原麻の生産技術の管理を行っている昭和村からむし生産技術保存協会(国の選定保存技術)によれば、会員となっている農家は45軒あり、生産者の年齢は年々高齢化しており、会員の半数は80歳以上の高齢者である。

・手績み糸では、苧績みする人の確保が重要であるが、高齢化、後継者不足により数が減少している。現在、小千谷縮及び宮古上布ではそれぞれ10名弱、八重山上布では4050名となっている。

・宮古上布では手績みする人の高齢化により、特に細い糸の供給が減少している。

・供給者へのアンケート調査によれば、回答企業の半数が産地との取引において「取引量が少ない」ことを問題としている。

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・糸積みの後継者育成のために、宮古島市の助成を受け宮古織物事業協同組合が取り組みを行っている他、2003年に文化庁ふるさと文化再興事業で「苧麻糸積み」が選定保存技術に指定されたことから2003年から2007年の4年間文化庁の支援を受け、苧麻糸積み保存会で糸積みに関する研修が行われている。

 

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2-4.漆

 

(1)生産・供給の状況

 

<概況>

・漆は、明治以降、外国産漆(主として中国産)の輸入に依存してきたため、国内での漆樹の植林や採漆業は衰退した。現在、組合として漆原木を管理し漆の生産を行っている地域は、岩手県二戸市浄法寺町と茨城県大子町のみで、浄法寺町の「浄法寺漆」は日本一の生産量(全体の6割)を誇っている。その他の生産地域としては、新潟県、栃木県、福島県、青森県、岡山県、徳島県、石川県、山形県、京都府等があるが、生産量は少ない。

・漆は、原木からの採取量を増やすためには原木周辺の雑草の下刈りをまめに行い、風通しをよくするなどの手入れが必要である。他の地域にも漆は自生しているが、個人所有の原木は、手入れが行き届かないことから、極めて生産量が少ない。

 

<生産量>

・農林水産省の特用林産資料よれば、漆の国内流通量は、年によって変動があるが、国産漆の年間生産量は1トン~1.5トン、中国産漆の輸入量は100トン前後である。国産漆の生産量は、全流通量の1%程度である。ちなみに、2006年の輸入量は約97.54トンで、国産生産量は約1.33トンである。生産地は岩手、茨城、その他(栃木、新潟、福島等)となっている。

 

図表2-11 全国漆生産量、輸入量、消費量の推移
全国漆生産量、輸入量、消費量の推移 

 

図表2-12 府県別国産漆生産量
府県別国産漆生産量 

 

・岩手県では、平成17 年には年間約800kgの漆が採取されており、直近数年間の漆生産量は1トンを切る状態が続いている。今後も職人数が増えなければ、現在の生産量の維持も難しい状況が続くものと推測されている。

 

<生産、供給に関わる業者、人材の状況>

・漆の生産に関わる重要な人材は、漆掻き職人である。漆の生産量は、漆掻き職人の数と密接に関連しており、漆産地では漆掻き職人の減少が問題となっている。浄法寺町には、昭和20年代、300人以上の漆掻き職人がいたが、安価な輸入品が増えて望む売買が難しくなり、現在は10数人にまで減少している。漆掻きには熟練が必要であり、上手な人と下手な人とでは採取できる漆の量に大きな差が生じる。

・漆の木から採取した荒味漆(あらみうるし)を精製し漆工職人に漆原料を供給する漆精製業者も重要な担い手である。

 

 <産地への供給の状況>

・供給業者へのアンケート調査によれば、一部の業者において供給不足の状況が生じているが、概ね供給量は確保されている。供給不足の要因として、「原材料資源の確保量の減少」、「原材料生産者の数が減少」、「原材料生産者が高齢化」、「品質の良い原材料の確保が困難になっている」、「原材料の生産者も減少しているが、今年は特別な用途により不足ぎみ」、「市の財政では十分な生産が出来ない」等の要因が挙げられている。

 

図表2-13 産地への供給の状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

11

78.6

産地の需要に対し供給不足の状況にある

3

21.4

合計

14

100

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(2)生産・供給システム

・国産漆の場合、掻き取られた漆は、独自の販路を持つ集荷業者( 仲買人)が集荷し、漆精製業者等へ販売される。わが国における漆の流通量のほとんどは中国、ベトナム、タイ、ミャンマー等から輸入された漆であり、中でも 中国産が主流を占める。中国産漆は、国内の原料商あるいは中国の商社を通して輸入され、漆精製・販売業者に出荷される。国産漆は、産地の生産組合を通して 出荷される。

・漆の最終ユーザーへは、他地域の業者から漆工品製作者への直販が最も多く、次いで多いのが地元業者からの直販である。産地の組合を通した販売も行われている。さまざまな特性、品質の漆を大量に使用する漆器製造業者においては、複数の漆屋と取引しているケースが多い。

 

(3)生産・供給における問題点

・国産漆は、漆掻き職人の減少や高齢化あるいは需要の減少などが進み、生産量拡大は難しい状況にある。神社・仏閣の修復等による大量需要が発生した場合には、産地の需要に大きな影響を与える可能性がある。

・漆掻き専業では生計を維持できない。

岩手県浄法寺の資料(浄法寺漆振興戦略)によれば、年間生産量を800 ㎏ とした場合、漆掻き職人の希望価格で売れたとしても年間生産額は3 千万円弱、掻き子の人数を15 名とした場合の一人当たりの粗収入額は約190 万円であり、200 万円にも満たない。更に作業のための諸経費を差し引くと、その所得は家族を十分養うには程遠い。漆掻き職人に若い人がなかなか育ちにくい状況は、漆掻き専業で生計を維持できないことが主な原因となっている。

・中国産漆は、毎年価格が上昇しており、その背景には労働者の都市への流出、人件費の高騰、自然環境保護などによる生産者減少がある。また、小田原漆器、山形仏壇、岩谷堂箪笥等では品質の低下を問題視している。

・供給業者へのアンケート調査によれば、国産漆の生産・供給上の問題から、産地との取引において取引価格への対応が困難」、「取引量が少ない」、「産地の取引方法や取引形態」等の問題が生じている。

 

図表2-14 産地との取引における問題

カテゴリ

件数

構成比(%)

特に問題はない

1

7.1

納期への対応が困難

1

7.1

取引価格への対応が困難

10

71.4

産地が要求する品質の原材料確保が困難

1

7.1

取引量が少ない

10

71.4

産地の取引方法や取引形態

5

35.7

産地における地元原料へのこだわり

1

7.1

その他

1

7.1

合計

14

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・岩手県浄法寺では、平成7年に日本うるし掻き保存会を設立し、伝承者の養成事業を実施しているが、生産拡大のためには、生産者の確保、育成と生産団体への支援等の対策が必要。

・岩手県浄法寺では、今後の対策として「浄法寺漆マイスター制度( 仮称)の創設」を検討している。これは、地元だけではなく全国的にも貴重な技術を持つ漆掻き職人を日本うるし掻き保存会と行政が連携して「浄法寺漆マイスター( 仮称)」として認定し、その技能と職業について一般に広く浸透させるとともに、漆掻き職人の励みとするものである。

・国産漆は中国産漆と比較して品質に優れるが、供給面と価格面で十分な量を確保することが困難であるため、用途により国産漆を使い分ける、中国産漆をブレンド等の対応を行っている。逆に中国産漆の品質低下に対しては、国産漆をブレンドする等の対応を行っている。

 

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2-5.和紙原料(楮、三椏、雁皮)

 

(1)和紙原料の生産・供給状況

 

<生産量>

・国産和紙原料の生産に関する公式の統計はないが、日本特産農産物協会の「和紙原料に関する資料」における推計では以下のようになっている。

 

図表2-15 和紙原料の2006年生産量および輸入量(白皮)

約9トン(輸入量:34トン)

三椏

約102トン(輸入量:11トン)

(出所)日本特産農産物協会の「和紙原料に関する資料」

 

<生産・供給に関わる業者、人材の状況>

・和紙原料の生産を担う重要な業者、人材は、栽培する人(農家)、原料商である。楮には自生のものと栽培のものがある。楮の栽培にはあまり手間がかからないが、収入が他の業種に比較して非常に少ないことから、働き盛り(4050代)のなり手がなく、現在は70歳以上の高齢者が担っている。(農家の年間生産量は20貫~30貫がざらで、多くて年間50貫程度。50貫生産した場合の収入は15万程度である。)

・原料商は、栽培農家から主に黒皮状態の原料を購入し白皮に加工して漉き屋に販売する。個人商売の人が多く、楮専門、三椏専門、輸入専門等に分かれている。原料商は和紙に使用する薬品なども取り扱っている。高知県には78業者存在するが、全体的に高齢化しており、数も減少している。

 

<生産・供給の状況>

・わが国の和紙の主要な原料は楮である。楮の消費量の70%以上は、フィリピン、タイ、中国等からの外国産楮が占めると推測され、伝統的和紙の主原料となっている。最近はカンボジア、ラオスなどからも輸入されている。

・国産楮は、東北から九州に至る広範囲な地域で生産されているが、生産の中心地域は高知県と茨城県で、生産農家数も多い。高知県は国産楮の40%~45%を生産している。

・和紙原料の生産地では、生産農家数の減少とともに、栽培面積、生産量が減少している。楮の採取は高齢者が行っており、生産量減少の要因ともなっている。

・三椏は主に紙幣に使用されており、生産農家は四国地域(高知、徳島、愛媛)、山陽・山陰地域(岡山、山口、島根)に集中している。最近はお札への含有量が減少し、生産量も減少している。

・供給業者へのアンケート調査によれば、回答企業の多くは産地の需要に応じて十分な供給を行っているが、一部の業者においては供給不足の状況にある。その理由として、「原材料資源の確保量が減少」、「原材料生産者の数が減少」、「原材料生産者が高齢化」、「品質の良い原材料の確保が困難」等を挙げている。


図表2-16 産地への和紙原料の供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

5

71.4

産地の需要に対し供給不足の状況にある

2

28.6

合計

7

100

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

・和紙原料の大半は輸入原料であり、海外の業者から日本の原料商を通して、和紙産地に供給されている。海外での楮生産に関しては、日本産苗木を供給するなど組合や原料商が協力しているが、日本産に匹敵する品質のものは得られていない。

・国産原料は、地元の手漉き和紙にのみ供給されるケースと、他産地に供給されるケースがある。

・伝統的和紙産地で使用されている輸入楮は、輸入原料商を通して調達している。国産和紙原料に関しては、紙漉き業者や産地組合が、生産地のJA等の生産者、原料商と取引し調達を行っている。

 

図表2-17 和紙原料の供給先

カテゴリ

件数

構成比(%)

地元産地の原材料業者に供給

1

14.3

地元産地の流通・販売業者に供給

1

14.3

地元産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

6

85.7

他産地の原材料業者に供給

2

28.6

他産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

5

71.4

他産地の流通・販売業者に供給

1

14.3

合計

7

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

(3)生産・供給における問題点

・外国産楮の増加や和紙需要の減少により、楮の皮の生産量が激減した。価格調整機能の低下などもあり、生産をやめる農家が増えている。後継者の確保難は最大の問題である。後継者確保につなげるためには価格対策も重要な課題。

 

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・高知県手すき和紙協同組合では、2008年4月に土佐楮保存会を立ち上げ、文化庁の補助金を使用して、楮の生産・加工農家への支援を行い、生産・加工の保存に取り組む予定である。

・質を落とさずに楮原料の量的確保を実現するためには、国産楮に代替できる楮を開発する必要がある。高知県の原料商は、年以上前から、南米のパラグアイで生産される楮の流通を進めている。

 

図表2-18 和紙原料の生産量
和紙原料の生産量

図表2-19 都道府県別の生産量
都道府県別の生産量
(出所)日本特産農産物協会「和紙原料に関する資料」

 

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2-6.織機

 

(1)生産・供給の状況

 

<生産・供給に関わる業者、人材の状況>

・織機の生産・供給に関わる主要な業者・人材としては、機料店、機械織機メーカー、手織機を製作する業者や大工、鉄工所(鍛冶屋)などがある。

・機料店の仕事は、織物業者からの要望に応じて織りに関わる様々な道具を供給している販売業者であると同時に、機の補修に関わるメンテナンスサポートを行っている。産地におけるブローカー的な役割を担っている業者、機やその部品を製作している業者等もある。

・手織機の製作者や大工は、機や部品製作の重要な担い手である。趣味の手織機を製作する業者は多くいるものの、業者向けの手織機を製作する業者は数社とも言われている。

・鍛冶屋(鉄工所)も機に使用される特殊な金具を供給する重要な担い手である。現状では、高齢化や後継者不足でこのような業者や職人が減少し、新規の部品調達が困難な状況となっている。

 

<生産・供給の状況>

・業界へのヒアリング調査によれば、産地向け手織機の製作を専業としている織機業者は数社といわれている。昔と比較すると、産地への手織機の生産・供給力は減少している。一方、一般個人向けの小型手織機を生産している織機メーカーは増えている。

・供給業者へのアンケート調査によれば、「主に産地と取引している」回答企業は少なく、「産地への供給に関して供給不足の状況」とする企業が半数を占める。


図表2-20 産地との取引状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

主に産地と取引している

2

28.6

取引しているが、産地との取引量は少ない

5

71.4

合計

7

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」


図表2-21 産地への供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

3

50.0

産地の需要に対し供給不足の状況にある

3

50.0

合計

6

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」


(2)生産・供給システム

・手織機は、地元の織機業者、大工、機料品店などが製作し、織屋との直接取引あるいは機料品店を通した取引等によって供給されている。特に、織機部品の補修、交換等のメンテナンスに関しては、機料品店が大きな役割を担っている。

・アンケート回答企業には、一般個人向け織機を製作しているメーカーも含まれる。このような企業には、元々産地向け織機メーカーが一般向け織機も製作販売しているケースと、一般向け織機のみを製作販売しているケースに分かれる。


図表2-22 織機の生産・供給における取引

カテゴリ

件数

構成比(%)

地元産地の流通・販売業者に供給

3

37.5

地元産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

4

50.0

他産地の流通・販売業者に供給

1

12.5

他産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

1

12.5

産地以外の流通・販売業者に供給

1

12.5

その他(一般、個人等)

3

37.5

合計

8

 

(3)生産・供給における問題点

・手織機では、新規の機の生産・供給は少ないため、現在使用している機の部品の補修・交換が産地の重要課題となっている。これまで、機屋の要望に応じて部品を提供していた産地の機料店、大工、鉄工所等が減少し、補修・交換部品の生産・供給体制が崩れつつある。産地からの織機部品の注文数が年々減少した結果、小ロットでは採算が合わなくなり、生産が打ち切りとなった部品が増えている。

・機械織機の分野では、伝統的な帯の製造などに使用される産地向けの織機は、メーカーによる生産打ち切りの問題が生じており、織機の新規調達が困難、部品調達が出来なくなるといった状況が深刻化している。

・かかる状況から、ほとんどの産地では、既存の織機、部品のリサイクル利用を図りながら、現在の手織機や機械織機の継続的利用を進めているが、西陣織では、ジャカード織機、レピア織機において供給が困難な状況が生じている。

・織機供給業者へのアンケート調査によれば、供給不足となっている理由として、「用具の製作に必要な原材料の入手が困難」、「用具の製作業者数が減少」、「用具の製作業者が高齢化」、「取引量で折り合わない(ロットが少ない)」、「価格面で折り合わない」等を挙げている。産地との取引においては、特に「取引量が少ない」ことを問題とする企業が多い。


図表2-23 産地との取引における問題点(手織機)

カテゴリ

件数

構成比(%)

納期への対応が困難

1

20.0

取引価格への対応が困難

2

40.0

取引量が少ない

4

80.0

合計

5

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」


(4)生産・供給に対する供給側の対応

・久留米絣協同組合では、地元だけでは調達が出来ない部品もあるため、同じような悩みを抱いている他の産地と交流し、在庫の把握など行いながら部品を融通しあうことも行っている。

・西陣織工業組合では、機械織機および手織機の部品における調達不足に対応するため、「西陣織不足機器開発事業」に取り組んでいる。

 

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2-7.筬(竹筬)

 

(1)生産・供給の状況

 

<生産・供給の状況>

・供給業者へのアンケート調査によれば、竹筬の供給を行っていると回答した業者が3社あったが、これは、中古部品や中国からの輸入品と推測される。

 

図表2-24 産地への竹筬の供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

3

60.0

産地の需要に対し供給不足の状況にある

2

40.0

合計

5

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

<生産に関わる業者、人材の状況>

・竹筬の製造は、昔は筬屋がすべての工程を行っていたが、その後に竹筬羽の製造と組立てが分業化され、近年は岐阜県が竹筬羽の生産拠点となっていた。岐阜県 の場合、竹筬羽の製造はさらに分業化され、削り専門の職人と仕上げ専門の職人に分かれていた。出来上がった竹羽を組み立てるのが竹筬屋である。その他、竹 筬の修理を行っている職人や業者がいる。

・竹筬羽の仕上げを担っていた唯一の職人である森助一氏が2003年に亡くなり、岐阜県の日本竹筬工業の竹筬羽生産が停止した。その結果、全国の竹筬屋の竹筬製造も停止したため、竹筬は入手できなくなった。竹羽を製作する人が途絶え、組み立てを行う職人(竹筬屋)も10年前に京都の名人が亡くなり、現在は一人(鹿児島の清永桂子氏)という状況になった。

 

(2)生産・供給システム

・昔は、それぞれの織物産地には多くの竹筬屋が存在し、地元の機料店などを通して織屋に供給されていた。現在はその生産・供給体制が崩壊し、リサイクルシステムによって供給されている。その他、織物糸の流通業者による中国等からの輸入も行われている。

 

※補足-金筬の状況

今、竹筬と同じ事が金筬でもおきようとしている。金筬を作っている筬屋の数は現在、最盛期の十分の一以下に激減している。その主要因は、日本で織物が作られなくなり、経営が成り立たなくなったことが挙げられる。その為、後継者もいなく、筬屋の多くは 6070代という年齢でいつ廃業を決意されてもおかしくない状況にある。また、筬を作る材料屋も同様の状況にあり、リードワイヤー(筬羽)屋は次々と辞めてしまい、今では残り2軒(去年までは5軒)となっている。(日本竹筬技術保存研究会のホームページより)

 

(3)生産・供給上の問題点

・一番の問題は、竹筬の製作者が途絶え、産地への供給が出来なくなったことである。多くの産地で調達上の支障が生じている。

・伝統的工芸品の職人は自立性が高いのに対し、筬屋は巨大な織物(製織)産業の中に組み込まれた末端の職業として自立性が低い。近代製造産業を下支えしてい る高い技術・技能を要する職人でありながら職人としては評価の対象にあがってこない職人である。いわば"埋もれた職人"とでも呼ぶべき職人といえる。その ため、織物業の衰退によって受ける影響は非常に大きい。

・竹筬の製作や販売に関わる供給業者へのアンケート調査によれば、「取引量が少ないこと」を一番の問題としている。

 

図表2-24 産地への竹筬の供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

3

60.0

産地の需要に対し供給不足の状況にある

2

40.0

合計

5

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・竹筬職人の育成は、45年前から日本竹筬技術保存研究会(竹筬研究会)が取り組んでいる。竹筬研究会によれば、実用化レベルの竹筬羽を製作できる後継者候補が45名いる。また、西陣織工業組合でも竹筬羽製作の後継者育成と組立て職人との連携による竹筬復活に取り組んでいる。

・竹筬は、特定の寸法のみしか製作出来ないのでは、産地のニーズに応えられない。産地からの注文に応じて、どんな密度の竹筬も製作出来る技術が求められる。まだ、そのような職人が育つには至っていない。

・現在の後継者は中高年者が中心であるが、竹筬製作復活への新たな道が開かれた状況にある。本格的な生産・供給体制を実現されるためには、現在研修中の若手が一人前になり、生活も確保されるシステムが構築される必要がある。

 

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2-8.筆(蒔絵筆)

 

(1)生産・供給の状況

 

 <生産・供給の状況>

・蒔絵筆は、主にネコの毛を使用した筆が製造・販売されている。その他、タヌキやネズミの毛を使用した筆、ぺんてる()の人工筆が製造・販売されている。ネズミの毛を使用した根朱筆は、毛の入手が困難となっていることから、現状では極少量しか供給されていない。

・蒔絵筆の年間需要量は、流通業者の推定によれば、1000本~3000本である。

・供給業者へのアンケート調査によれば、回答企業の半数近くが、供給不足にあると回答している。供給不足の主な要因として、「原材料の入手が困難」、「製作者数の減少」、「製作者の高齢化」等を挙げている。

 

図表2-26 蒔絵筆の産地への供給状況

カテゴリ

件数

構成比(%)

産地の需要に応じて十分な供給を行っている

5

55.6

産地の需要に対し供給不足の状況にある

4

44.4

合計

9

100.0

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」


図表2-27 供給不足が生じている理由

カテゴリ

件数

構成比(%)

用具の製作に必要な原材料の入手が困難になっているため

3

75.0

用具の製作業者数が減少しているため

2

50.0

用具の製作業者が高齢化しているため

2

50.0

品質に優れた用具の製作が困難になっているため

1

25.0

合計

4

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

<生産・供給に関わる業者、人材、原材料の状況>

・蒔絵筆は現在、村九商店(村田九郎兵衛氏)、久野商店(久野稔氏)、大野久夫氏、角岡氏等の製作者によって供給されている。その他、ぺんてる(株)が輪島漆器蒔絵業組合と共同で人工蒔絵筆の製造を行っている。

・蒔絵筆にはネコ、ネズミ、タヌキ等の毛が使用されるが、これらの毛は動物を捕獲する人によって毛皮とされ、毛皮を集荷する問屋を通して筆の製作者に供給される。これら毛の供給に関わる人材や・業者も、優れた蒔絵筆を制作する上で欠かすことが出来ない。毛は、国内だけでなく、中国等の海外からも供給されている。

 

(2)生産・供給システム

・蒔絵筆の製作者がいる地域は、京都、大阪、愛知県等の一部の地域である。蒔絵の職人は、これらの製作者から直接購入したり、地元や他地域の流通・販売業者(漆精製業者、金粉・金箔業者等)から購入したりして入手している。


図表2-28 蒔絵筆の生産・供給における取引

カテゴリ

件数

構成比(%)

地元産地の流通・販売業者に供給

4

44.4

地元産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

5

55.6

他産地の流通・販売業者に供給

3

33.3

他産地の伝統的工芸品製造業者や組合に供給

6

66.6

産地以外の流通・販売業者に供給

6

66.6

その他

1

11.1

合計

9

 

 

(3)生産・供給における問題点

・蒔絵筆に使用できるドブネズミやクマネズミの良質な毛の入手が困難となり、蒔絵筆として最良な根朱筆の製作が難しくなっている。その結果、入手が困難となっているだけでなく、根朱筆は13万円以上と非常に高価になっている。

・最近は、使用する獣毛の質が低下している、蒔絵筆の製作に必要な強い麻糸の入手が困難になっている、蒔絵筆の注文本数が減っている、職人が高齢化しているなどの理由により、蒔絵筆製作技術の低下が生じている。その結果、筆の腰が弱くなっている、抜け毛がある、毛先がそろっていない等の使用上の問題点が蒔絵師等から指摘されている。

・蒔絵筆製作における上記のような問題により、産地との取引において多くの問題が生じている。供給業者へのアンケート調査によれば、「産地が要求する品質の用具の製作が困難」、「取引量が少ない」、「取引価格への対応が困難」といった問題が挙がっている。

 

図表2-29 産地との取引における問題

カテゴリ

件数

構成比(%)

納期への対応が困難

2

25.0

取引価格への対応が困難

3

37.5

産地が要求する品質の用具の製作が困難

4

50.0

取引量が少ない

4

50.0

用具に対する保守的なこだわり

1

12.5

合計

8

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・輪島漆器蒔絵業組合では、根朱筆製作技術を保存・継承するために、蒔絵筆製作者との共同による根朱筆試作等に取り組んでいる。その結果、最近では極少量ではあるが、久野商店、大野久夫氏等も根朱筆を製作・販売するに至っている。ただし、ネズミの毛の安定的確保は今後の課題である。

・また、輪島漆器蒔絵業組合では、漆器産地の要望に対応し、文具メーカー(ぺんてる)と共同で化学素材を使用した人工蒔絵筆を平成16年に開発。職人からも高い評価が得られたことから、現在初期の製品を改良した人工筆(3種類)の金粉・金箔業者を通した販売に取り組んでいる。

 

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2-9.刷毛(漆刷毛)

 

(1)生産・供給の状況

 

<生産量>

・漆刷毛は、バブル期の頃と比較して需要は半分程度に減少し、現在の生産量は年間1,000本以内と推測される。広重刷毛店の場合、生産量は年間500本程度で、需要先は全体の8割が産地向けで、残りの2割が漆工教室、手作りの釣り竿、将棋等向けである。

 

<生産に関わる業者、人材、原材料の状況>

・漆刷毛を製作する漆刷毛師の数は減少傾向にあり、現在は2名のみである。1人は、9世泉清吉氏であり、漆刷毛の製作を専業としている。もう1人の漆刷毛師の詳細は不明であるが、東京で兼業として漆刷毛の製作を行っている。わが国の漆刷毛の需要は、この2人の漆刷毛師によって提供されている。35年前には、関西、新潟、東京等に6名の漆刷毛師がいたとされるが、高齢化、廃業等により減少した。

・刷毛に使用される毛は、昔は古かもじが最良とされ使用されていたが、年々かもじの入手が困難となり、1970年頃から輸入されるようになった中国産人毛に、徐々にとって代わられるようになった。

 

<生産・供給の状況>

・供給業者へのアンケート調査によれば、回答業者の全て(6社)が「産地の需要に応じて十分な供給を行っている」と回答している。

 

(2)生産・供給システム

・刷毛に使用される毛髪に関しては、今から156年前頃までは、かもじの収集システム、すなわち、収集、競り市、販売のサイクルがあったが、現在はかもじの需要がないため完全に崩壊し、古かもじの入手が不可能となっている。今は原料商から中国産人毛を輸入して使用されている。

・漆刷毛師によって製作された漆刷毛の供給に関しては、以前は、お抱えの問屋(漆問屋)を通して産地の塗り師へ供給されていたが、現在は、問屋の減少(現在はごく少数)等により、漆刷毛師と産地との直接取引が増えている。広重刷毛店の場合、問屋との取引は50%程度に減少している。また、東京の漆刷毛師の場合は、刷毛の製造・販売業者へ漆刷毛を供給し、業者ブランドで販売されていると推測されている(OEM供給)。また、販売方法では、ネット販売も普及している。

 

(3)生産・供給における問題点

・需要が減少していることから、専業として生計を立てるのが難しく、漆刷毛の製作者が2名にまで減少し、生産・供給体制が弱体化している。

・かもじを使用した最高級の漆刷毛は、かもじの入手が不可能になったことから、ストックのかもじが無くなった時点(34年後)で製作が行われなくなる。

・近年、問屋が在庫を持たないようになり、まとめて注文するようなことが無くなっている。そのため、製作者側が在庫を持たざるを得ない状況になっており、経営上の負担が大きくなっている。

・供給業者へのアンケート調査によれば、産地との取引に関しては、「取引量が少ない」ことを問題とする業者が多い。

 

図表2-30 産地との取引における問題

カテゴリ

件数

構成比(%)

取引価格への対応が困難

1

16.7

産地が要求する品質の用具の製作が困難

1

16.7

取引量が少ない

4

50.0

産地の取引方法や取引形態

1

50.0

合計

6

 

(出所)平成19年度「生産基盤の供給に関するアンケート調査」

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・漆刷毛の生産・供給を維持して行くためには、一般の人の漆工への関心を高め、刷毛の需要を少しでも拡げることが大事である。泉清吉氏は、漆刷毛について、一般の人が少しでも見て知ってもらうことが大変重要なことと考え、30年前から全国で製作実演や講演を行っている。

 

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2-10.簀(す)

 

(1)生産・供給の状況

 

<生産・供給に関わる業種、人材、原材料の状況>

・全国手漉和紙用具製作技術保存会によれば、現在、簀を製作している人は、静岡、岐阜、福井、鳥取、愛媛、高知等の地域に合計10数名おり、人材的には需要に十分対応可能な生産・供給体制がある。

・人材的には、簀よりも桁の製作者が少ない。桁を製作できる人は、岐阜、福井、高知等に合計4名程度いるといわれているが、中には高齢者もおり、実質的に生産・供給可能な人材はもっと少ない状況となっている。桁の製作には、木を使い慣れた大工でも何年間もの修行が必要な技術が求められるため、後継者確保が難しい。

・簀桁の製作には、竹ひご、編糸(生糸に代わってナイロンも使用されている)、絹紗織り、金具などの基本素材の職人も必要である。簀桁はこれらの職人の協力を得て製作される。

 

<生産・供給の状況>

・和紙需要の減少と共に紙漉き業者も減少し、簀桁の需要が減少している。そのため、簀桁の生産・供給能力は昔と比較して大幅に減少しているものの、全国的に見れば現在の需要に充分に対応できる状況にある。

 

(2)生産・供給システム

・簀桁は、竹ひご、絹糸、金具等の専門業者から材料・部品の供給を受け、簀桁製作者が組立て生産を行う。簀桁の両方を製作する業者、簀のみを製作する業者、桁のみを製作する業者等に分かれる。

・簀桁の製作を一つの地域で完結できる地域はほとんどなく、多くは他地域から材料や部品の供給を受けて製作を行っている。

・製作した簀桁は、製作者との直接取引または組合との取引を通して紙漉き屋に供給される。

 

図表2-31 簀桁の生産・供給における取引関係

簀桁の生産・供給における取引関係 

 

(3)生産・供給における問題点

・和紙製造者の数は、現在も減少しつづけており、これが用具製作者の生計に大きな影響を与え、用具製作者の廃業、後継者難などの問題を起こしている。この減少に歯止めをかけないと、現在の用具製作者が廃業に追い込まれる可能性がある。

・現在、簀桁の製作している人の中には高齢者も含まれ、高齢のため思うように仕事が出来なくなっている方もいる。高齢による廃業等によって、地域レベルでは今後生産・供給が出来なくなる和紙産地が出てくる可能性がある。

 

(4)生産・供給に対する供給側の対応

・簀桁の製作者は、高齢化、後継者確保難等により減少したが、全国手漉和紙用具製作技術保存会(高知県)による活動などにより、簀桁技術の保存、供給体制の強化が進められている。

 

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